AI開発を依頼する前に、発注側が決めておく5つのこと — 決めなくてよいことも3つある
今井 宣聡代表取締役
2026-10-12 / AI開発
AIの開発を外に頼もうと決めて、問い合わせフォームを開いた。入力欄に何を書けばよいのか分からず、そのまま閉じた。この記事は、その場面の続きを書くためのものです。
私たちはAI開発を受託する側です。受ける側の立場から、相談の前に決めておいてほしいことと、決めなくてよいことを分けて書きます。お渡しするのは3つです。
- 依頼の前に、発注側で決めておく5つのこと(1行ずつ書けます)
- 私たちにご相談いただく場合に、決めなくてよい3つのこと
- 相談から運用までの5つのステップ
頼み方が分からないのは、決めることが多すぎるから
どのAIを使うか。どの会社に頼むか。予算はいくらか。契約はどうするか。これを全部決めてから相談しよう、と考えると、相談の手前で手が止まります。
私たちは、AI開発でつまずく原因を、技術よりも「何のために・どの業務で使うか」があいまいなまま作り始めることにあると見ています。この見方に立つと、先に決めておきたいのは業務の側のことで、技術や金額の側ではありません。
そこで、先に決めることと、相談してから決まることを分けます。先に決めるのは5つで足ります。
依頼の前に書いておく5行
対象の業務を1つ思い浮かべて、1行ずつ書いてください。整った文章でなくてかまいません。
この5行は、この記事のために組んだ私たちの整理で、業界の標準でも公的な指針でもありません。相談の前に、この5行を書いてみることをおすすめします。
1行めだけは先に書いてください。2〜5行めは、書けなければ空けたまま次の行へ進んでかまいません。空いた行の扱いは後半に書きます。
1. 対象 — どの業務の、どの作業か
「AIで業務を効率化したい」では広すぎます。部署、業務、その中の作業まで書きます。型は「(部署)の(業務)のうち、(作業)」。書くのは1業務だけです。この行に書くのは範囲で、量は次の行に回します。
2. いまの数字 — その作業に、何人が、月に何時間・何件かけているか
概算でかまいません。正確な集計は要らず、担当者に聞いて分かる範囲で足ります。型は「担当◯人が、月に合計◯時間、約◯件」。概算や見積もりを見るとき、高いのか安いのかを比べる相手になるのがこの行です。
3. 間違いの受け皿 — AIが誤ったとき、誰がどの時点で気づくか
AIの出力を1件ずつ確かめる人と、確かめる時点を書きます。型は「(役割)が、(次に渡す相手)に渡す前に」。業務の流れの中の話で、仕組みそのもののことは5行めに書きます。なぜこの行が要るのかは、その業務、本当にAIですか — AIが効く3つの条件と、最初の90日の順番に書きました。
4. 情報の線引き — その作業で扱う情報のうち、社外に出せないものは何か
顧客情報、契約書、図面など、種類で書きます。型は「(種類)と(種類)は社外に出せない」。これは情報の種類の話で、3行めの誤りの話とは別の軸です。私たちは、入力データが学習に使われない構成や、社内環境で完結する構成など、扱う情報の機密度に応じた設計をご提案します。構成を決める行ではないので、書くのは種類だけで足ります。社外に出せない情報が多い業務を最初の対象にするかどうかも、この行を見ながら、ご相談の場で整理できます。
5. 作った後の持ち主 — 仕組みを直す・止めるを誰が決め、日々の運用を自社で持つか、外に任せるか
書くことは2つです。1つは、仕組みそのものを直す・止めるを決める人。役割で書きます。もう1つは、運用を自社で持つか、外に任せるか。こちらは決まっていなければ「未定」と書きます。3行めはAIの出力1件ごとの話で、この行は仕組みそのものの話です。それぞれの場合に私たちが何をするかは、後半のSTEP 5に書きます。
書いた形の見本を1組置きます。数字は◯のままです。記入の形を見るためのもので、実在の会社の例ではありません。
- 営業部の見積作成のうち、過去の見積を探して金額の根拠を拾う作業
- 担当◯人が、月に合計◯時間、約◯件
- 見積の担当者が、お客様に送る前に
- 顧客名と、取引先ごとの価格は社外に出せない
- 直す・止めるを決めるのは営業部の責任者。運用を自社で持つか任せるかは未定
1行めが書けたら、ほかの行が空いていても、そのまま相談に持ち込めます。 この記事でお渡しできないものが2つあります。御社の業務に対する概算と、効果が見込めるかどうかの見立てです。どちらも、対象の業務を伺わないと出せません。
概算について。AI受託開発の無料相談では、その場で概算をお伝えします。
見立てについて。費用対効果は、対象業務の作業時間と人件費から削減効果を試算し、開発費と並べてお見せします。効果が見込めない場合は、その段階で正直にお伝えします。
決めなくてよいこと、3つ
ここからは、私たちにご相談いただく場合の話です。他社では違う場合があります。
1. 使う技術
どのAIを使うか、どう作るかは、決めなくてかまいません。ご相談では、専門用語を使わずにご説明します。
2. 完成形の全体像
全社でどう使うか、最終的にどこまで自動化するかも、決めなくてかまいません。私たちの進め方は、まずプロトタイプを作り、効果を見てから本開発へ進む形です。1行めで業務を1つに絞ってあれば足ります。
3. 予算の確定額
金額を決めてからでないと相談できない、ということはありません。料金は内容に応じた個別見積もりで、無料相談でその場で概算をお伝えします。プロトタイプからの段階投資で、初期リスクを抑えられます。
概算や見積もりと見比べるときに、比べる相手になるのが2行めです。相談の時点で空いていてもかまいませんが、見比べるときまでに手元にあると判断しやすくなります。
「決めなくてよい」は「考えなくてよい」という意味ではありません。社内で上限の目安をお持ちなら、そのままお持ちください。
相談から運用まで、5つのステップ
AI受託開発の進め方は5つのステップです。これも私たちの場合の順番です。内容に応じて業務委託契約(準委任または請負)を締結してから着手します。お支払い方法・時期は契約時にすり合わせます。
以下、5行のどれがどこで材料になるかを、私たちの整理として添えます。
STEP 1 無料相談
原則オンラインで、30分からです。ご相談の段階からNDAを締結できます。5行はここにお持ちください。1行めが書けていれば、2〜5行めは空いていてかまいません。概算はこの場でお伝えします。お力になれない場合も、この場ではっきりお伝えします。
STEP 2 業務と課題の整理
業務の整理から一緒にやります。2〜5行めの空いた行を埋める材料は、この段で揃っていきます。1行めは、ここより前に決まっている前提です。
STEP 3 提案・見積もり
2行めが、提案と見積もりを見比べるときの物差しとして効いてきます。
STEP 4 プロトタイプ開発
期間は、プロトタイプなら1〜2ヶ月程度から。内容により変わるので、目安は無料相談でお伝えします。早い段階で動くプロトタイプをお見せするので、「思っていたのと違う」を防ぎながら進められます。3行めと4行めは、設計を考えるときの前提になります。
試作に入る前に、本番に移す条件を決めておくことをおすすめします。決め方はPoC観覧車型 — 降りる条件と、降りた後の担い手を先に決めるに書きました。
STEP 5 本開発・運用
先に書いたとおり、プロトタイプの後に進む段です。運用・保守までお任せいただけます。社内で運用したい場合は、手順書の整備までやります。5行めが効いてくるのがこの段です。
空いた行があったら
空いた行は、準備不足のしるしではありません。ただし、扱いは行によって違います。1行めだけは、相談より先に決めます。2〜5行めは、空いたまま相談に持ってきてかまいません。自分で埋めたい方のために、行ごとに手がかりを置きます。
- 1行めが空いている — 対象が決まっていないなら、開発の相談より先に、課題を特定するところからです。考え方はAI導入が進まないのは、順番の問題です — 課題から逆算する3段の考え方に書きました。社外と一緒に決めたいときの窓口はAI導入支援です。
- 2行めが空いている — 空いたままでかまいません。見積もりと見比べるときまでに手元にあれば、判断しやすくなります。
- 3行めが空いている — その作業の結果が次に渡る相手(お客様や次の工程)を1つ決めて、渡す手前でいま内容を見ている人を書きます。いま誰も見ていないなら、空欄のまま、そのことをご相談でお伝えください。
- 4行めが空いている — 社内で情報の扱いを決めている人に確認してください。
- 5行めが空いている — 役割を「誰が・何を・どこまで」で書く方法を、一人エース依存型 — エースがいてもいなくても、推進が「会社の役割」になっていないに書きました。運用の持ち方は「未定」のままでかまいません。
5行の外に、もう1つだけ確かめることがあります。対象の業務の記録が残っているかどうかです。これは決めることではなく業務の状態なので、5行には入れていません。記録が残っていない業務は、AIを載せる前に、記録を残す仕組みが要ります。残す形を、いま使っている業務システムの中に作り込む場合は、それ自体がAI受託開発のご相談の対象になります。残す仕組みの考え方はデータ砂漠型 — 記録が「散らばっている」会社と「残っていない」会社は、最初の一手が違うにまとめました。
1行め(どの業務の、どの作業か)が書けないときは、業務ではなく課題のほうから入れます。 この記事の5行は、対象の業務が決まっていることを前提にしています。無料AI定着診断の最初の質問は、AIのことではありません。「いま、いちばん痛い課題はどれですか?」です。選択肢は8つあります(人手不足・採用難/属人化/定型作業の負担/売上の頭打ち/顧客対応の負荷/品質・ミス/情報の散在/その他)。ここから選ぶところから始まるので、業務を1つに絞れていなくても入れます。
まず1行め。残りは空いていてもかまいません
- 依頼の前に決めておくのは5行です。対象、いまの数字、間違いの受け皿、情報の線引き、作った後の持ち主
- 私たちにご相談いただく場合、使う技術・完成形の全体像・予算の確定額は決めなくてかまいません
- 1行めが空なら、相談より先に対象を決めます。2〜5行めは、空いたまま相談に持ってきてかまいません
今日のうちに、対象の業務を1つ決めて、5行を書いてみてください。1行めが書けていれば、ほかの行は空いたままでかまいません。無料相談は原則オンラインで、30分からです。
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